2017年2月26日日曜日

スウェーデンのインクルーシブ教育1


 今日は、質問があったスウェーデンのインクルーシブ教育について書こうと思います。 ここ数年、スウェーデンのインクルーシブ教育に関して質問をうけることがあり、その度に答えに困っていました。理由は、日本の方は、スウェーデンではインクルーシブ教育が進んでいるということを前提に質問されるので、説明が難しいのです。私は、日本を離れてすでに15年以上経っており、現在の日本の状況がよくわかりません。このため、比較をすることが難しいのですが、おそらく、スウェーデンの現状は日本よりは進んでいるのだろうと思いますが、スウェーデンのインクルーシブ教育も大きな問題をたくさん抱えており、共有できる問題も多いのではないかと想像しています。

 インクルーシブ教育は、スウェーデン語では、「Inkludering(インクルデーリング)」 と呼ばれています。インクルーシブ教育の行われている学校を「Inkluderande skola(インクルデーランデ スクーラン)」と呼んでいます。では、どんな学校のことをインクルーシブ教育が行われている学校と呼ぶかというと、2013年に出された特別支援教育専門機関によれば、
  • 様々なレベルでの帰属感、共通意識がある
  • たった一つのシステムであること(「普通の」生徒と「そうでない」生徒に分けたシステムでないこと)
  • 共通、同等の民主主義があること
  • 生徒たちの参加があること
  • 「違い」が良いものとして捉えられていること
とあります。上記のことが普通のこととして行われている学校がインクルーシブな学校ということになります。じゃあ、実際にスウェーデン中がこういう学校なのかというと、難しいところがあります。単純なところで、前に聞かれたのが、特別支援学校が存在しないのではというもの。そんなことはありません。私が働いている学校は、特別支援学校の中でも、特に重度の生徒を集めた学校になります。私はいつも説明するときに、スウェーデンは、「分離統合教育」をしていると説明しています。この言葉は私が勝手に作って使用しているものなので、ご注意を。。。

スウェーデンでは、上記のような定義でインクルーシブ教育を行う大前提に、知能指数70を境にして、特別支援学校と普通学校に分けています。どんな障害を持っていても、知能指数が70を越えると普通学校に、70未満であると特別支援学校に行くことになります。正確に書けば、知能指数70未満の場合、知的な障害があるとなり、特別支援学校に行く権利が与えられることになり、実際に行くかどうかは保護者が決めるというのが一般的です。学校法では「子供の最善」という項目があり、周囲が判断をすれば、親の決定を変えることもできます。知能指数が例えば、71であれば、知的な障害はないため、肢体不自由や発達障害であっても、普通の学校に通うことになります。このスウェーデンのシステムを、私は、知能指数70で「分離」して、「統合」する教育というふうに説明しています。

例外は、聾学校になります。盲学校はなくなり、地域の学校に吸収されましたが、聾学校は、国の管轄で今も残っており、インクルーシブ教育とは、程遠く、分離されて教育が行われています。特別支援学校も、その昔、無くそうという動きがあったのですが、簡単にまとめて書くと、特別支援学校の現場で働く職員の反対が大きかったために実現しなかったという声をよく聞きます。これに関する報告書があるので、また、機会があれば、いつか、書こうと思います。

その昔って、そんなに昔ではないですが、2010年に学校法が新しくなる前までは、この分離された特別支援学校に知的障害のない、知能指数が70を超える自閉症児も通うことができました。それが、2010年に学校法がかわり、なんと、それまで特別支援学校に通っていた知的障害のない自閉症児は、突然普通学級に戻されることに。😓 これは大問題になりました。。。特別支援学校には、障害判定が降りていない子も「反対のインテグレーション」という名前で通っていた場合もあり、これも強制的に普通学級に戻されたり。。。あとは、特別支援学級のような「特別なクラス」は、廃止され、すべての生徒がいわゆる「母体級」に所属し、インクルーシブ教育をしていくことになりました。この2010年の頃は、こうした法律の変化により、学校はちょっとしたカオスでした。。。どのくらいの生徒が、移動したかなどの統計は見たことがないのですが、これらの改革?の結果、ものすごく登校拒否、不登校が増え、現在、スウェーデンで大きな問題となっています。

それでは、なぜ、このようなインクルーシブ教育が推進されたかといえば、やはり日本と同じだと思うのですが、国際的な流れが大きく関わっています。スウェーデンもサラマンカ宣言や国連の障害者権利条約などの国際的な条約に批准しています。こういった外枠が出来上がり、それによって、少しずつ社会が変化していくことは重要であると思います。学校が、障害の有無の関わらず、様々な子供達によって、その違いを可能性として受け止め、互いに成長していける場となることは、社会、個人にとって、とても重要であると思います。そのために少しずつ変わっていっているのが、今のスウェーデンのインクルーシブ教育ではないかと思います。

だいぶ長くなったので、「スウェーデンのインクルーシブ教育2」に続けます。


4 件のコメント:

  1. ありがとうございました。だんだん輪郭がつかめてきました。
    1点、ろう学校の件ですが、これは権利条約の議論でも対立があった部分です。ろう学校には、独自のろう文化を維持するコミュニティの拠点としての役割があるので、すべてインクルージョンというのは違うという議論でした。また、カナダのBC州ではフルインクルージョンが採用されているという日本語のブックレットも出版されています。
    ぼくはインクルーシブ教育と特別支援教育について以下のように考えているのですが、
    『特別支援学校は障害者権利条約とはなじまない』
    http://tu-ta.at.webry.info/201604/article_3.html
    Reiko S さんの意見を読んで、フルインクルージョンという場での合理的配慮の手法を特別支援と呼ぶというのもありかと思いました。

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  2. tu-taさん コメントありがとうございます。そして、ブログを読んでいただき、ありがとうございます。聾学校のこと、私も大学で同じような話を聞きました。tu-taさんのコメントを読んで、前にお会いした日本の研究者の方が言われたことをおもいだしました。私が説明をした際に、それは特別支援ではないと言われたのですが、スウェーデンでは、それは合理的配慮で、それは特別支援だというような「区分」や「名前」が重要視されることはなく、教育現場で行われる支援、援助として捉えられるので、不思議に思ったことがありました。スウェーデンの教育学部では、特別支援教育に関する授業の時間がかなり少ないことが問題になり、ここ数年は、文部科学省に当たる国の機関や、特別支援教育の専門機関が様々な対策を出して、基礎学校の一般教員の知識向上を図っています。日本で、この名前、合理的配慮や特別支援といった部分にこだわる理由があるのでしょうか。例えば、合理的配慮では予算が降りないが、特別支援なら出るといったような。。。上記のブログの記事を読ませていただきました。思ったのが、スウェーデンの分離統合型、インクルーシブ教育は、福祉国家の思想、理念があるからではないかと私は思っているのです。こっちの人々は、福祉のお金で面倒を見てもらう側であり、もう片方が、そのお金を納める側であるといった、この形を継続してきたスウェーデンという国では、この形が、それぞれ個人の生き方を支え合えるインクルージョンの形として見ていると。日本は、このようなはっきりとした形での線引きをしておらず、そうなると、フルインクルージョンの学校教育を求めると膨大な教育費がかかるのではないかと想像するのですが、どうなのでしょうか。スウェーデンでよく言われるのは、重度の障害を持った生徒がインクルーシブされるには、まだ、受け入れ側の準備が整っていないと言われます。長くなりました。こうしたコメントをいただくと、大変勉強になります。ありがとうございます。

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  3. 日本での増え続ける知的の支援校・支援級の在籍者数のデータです。
    http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/08/1358541_01.pdf 
    支援校の在籍者数は9pにあり、H13の2倍以上に増加。このように増え続けているのは知的の支援校だけ。
    15pには支援級の在籍者数の推移もありこちらも増加。インクルージョンではなく分離が進行中っていう感じです。大きな原因は文科省がやるきがないからということでしょうが、その結果として、普通級に余裕がなく、エクスクルーシブになってるからではないかと思うのです。

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    1. tu-taさん
      コメントをありがとうございます。なかなか返事がかけず申し訳ありませんでした。
      増加していますね。インクルージョンではなく、分離が進んでいるようですね。この知的の支援校をでて大人になっていく人々の将来がどうなるかによって大きな差が出るように思います。社会に溶け込み、生産性が生まれればいいのですが、どうでしょう。この増加に合わせた社会制度の見直しが必要になってくるのではと思います。どのくらいこういった支援学校の生徒数の増加が話し合われているのかきになるところです。いつもコメントありがとうございます。

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コメントをありがとうございます。