2017年2月27日月曜日

スウェーデンのインクルーシブ教育2

スウェーデンのインクルーシブ教育1」の続きです。今回は、いわゆる「普通の小中学校」で、どのようなインクルーシブ教育が行われているのかについて書こうと思います。


 前回インクルーシブ教育1で書いた通り、スウェーデンの学校システムは、分離統合されており、知能指数が70を超えた生徒は、基礎学校と呼ばれる日本の小中学校に当たる学校に通います。簡単に書けば、これである意味インテグレーションはできたということになります。

 統計などではなく、私の印象ですが、おそらくスウェーデンで最もインテグレーションが進んでいるのは、就学前学校、いわゆる幼稚園や保育園に当たる幼児教育のレベルであると思います。小さい頃は、同じ場所でという考えが浸透しており、よほど重い障害を持っていない場合は、自宅近くの就学前学校に通う場合が多く、公立の就学前学校であれば、コミューンの特別支援教育の専門教員が時折きて、職員指導などをしている場合を多く見受けます。園の中に特別なクラスを設けて、交流を図っている場合もありますが、日本のように「療育」という感じの保育を行なっておらず、日本の都道府県レベルに当たるラーンスティングによって運営されている「ハビリテーリング」という機関が障害を持った子どもたちの家庭でのサポートにあたります。こういった就学前学校の状況をインクルーシブ教育と呼べるかどうかは、難しいところです。理由は就学前学校でのインクルーシブ教育の定義自体があやふやであり、簡単に判断しにくいためです。脱線しましたが、詳しく書くと長くなるので、この話はここまでにして置きます。


 話を戻し、基礎学校(小中学校)の場合、スウェーデンでは、基本的には、特別支援学級と呼ばれるような特別なクラスの設定はしない学校が今でも多いのではないかと思います。この辺りは、学校法の解釈の問題とされており、コミューンや学校によってはそういった少人数のグループを設けている場合もあります。しかしながら、文部科学省に当たる国の教育機関が、少人数クラスでの取り出し授業などは、「一時的な」ものとし、永久的なものとしてはならないという方針を出しており、母体級に席を置く形が多いのではないかと思います。例として書くならば、母体級に席を置き、音楽や体育などの授業を受け、少人数のクラスで教科学習を受けると言った感じのことはよく行われています。

 インクルーシブ教育で重要だとされるのが、個人がどのように感じているかという部分で、帰属意識が感じられる、仲間の一員としての実感がある、それぞれの個性、障害を含めた違いを可能性、良いものとして見ることができていることであると言われています。スウェーデンでは、こうしたインクルーシブ教育を実現するために、最も重要なのは、その学校に関われる人々がインクルーシブ教育を実現するという熱意を持つことであると言われています。個人の感情、気持ちに深く関わるのですから、やはり、それを変えるのは、人々の熱意、やる気が重要なのでしょう。法改正が行われ、学校も変化していますが、そこにいる人々が知識を持ち、気持ちが変わらない限り、インクルーシブ教育がそれなりの形で行われるということは難しいのであると思います。

 おそらく、すべての子どもがその個性に自信を持ち、社会的にも学業面でも一員であるという実感を持って学校で生活していくには、様々なサポートが必要となると思うのですが、ここでは、学習面での小中学校のシステムを簡単に紹介したいと思います。スウェーデンには、いじめに対する対策や平等に対するプランもありますが、ここでは省略します。


 とりあえず、同じ場に統合された子どもたちの中には、問題を起こす子、勉強についていけない子などが出てきます。そう言った様々な個性と可能性を持った子どもたちに対して、どのような教育をしていくかというところに、インクルーシブ教育の醍醐味があるのではないかと私は感じでいます。スウェーデンのインクルーシブ教育を見ていて感じることは、あくまでも、生徒個人にとって最良と思われる形を模索し、行うことに重きが置かれており、特に生徒が必要最低限の学力、高校に入学できるように最低ラインの学力をつけることを重視していると感じます。クラスの中に問題を持った子供がいると、たいていの場合、先生の会議などを経て、各学校にある「Elevhälsa (生徒の健康)」という名前の専門家のチームで話し合いが行われます。そこから、「åtgärdsprogram(改善プログラム)」というプログラムが組まれ、特別な支援や援助が行われることになります。この改善プログラムは、昔はものすごく手順があったのですが、改定が行われ、現在は、初期段階の様々な特別な支援は「Extra anpassningar (特別な配慮、もしくは合理的配慮でしょうか)」とされ、このプログラムなしで行うことができるようになっています。例えば、机の配置やグループ関係、イヤホンの仕様と言ったような配慮は、この改善プログラムには含まれません。改善プログラムは、昨年度、小中学校に通う生徒のうちの5.6%が受けたようです。( Skolverketの資料より)この特別な配慮に何が含まれるかと言った資料も出ていますので、また、機会があれば、紹介したいと思います。

 各学校には、特別支援教育の専門教員がおり、こういった生徒たちの対応に当たっています。専門教員は、取り出し型の教育を行ったり、クラス担任に教室の中でどのような支援、援助を行うと良いかというアドバイスをしたりします。このほかに、特別支援教員の大きな役割が、早期発見にあると思います。小学0年生から、これらの教員により、簡単なテストが定期的に行われ、言語面で遅れがある子を見つけ出し、早期に援助を行うということが行われています。こちらも大体の学校にどのような流れでするかというのが決まっているので、いつか紹介できればと思います。

 改善プログラムが組まれる際には、保護者にも連絡が入っており、家庭と連携して行っていきます。時には、障害判定に持っていく場合ももちろんあり、最終的に特別支援学校に移動という場合もあります。個人主義の国ですし、80年代からの流れで個人の発達プログラムを作り、個人をいかに成長させていくかに重きを置いてきたスウェーデン、この改善プログラムも、内容はその子をいかに変化させるかが焦点となっています。しかしながら、ここ数年、インクルーシブ教育の流れとともに、個人のみでなく、みんなでいかに変えていくかというような視点で話が行われるようになってきており、これは大きな変化であると私は感じています。

 またまた、長くなりましたので、スウェーデンのインクルーシブ教育3に続きを書こうと思います。次は、忘れてならない、スウェーデンのインクルーシブ教育の理想の原点、「En skola för alla」について、書こうと思います。

2017年2月26日日曜日

スウェーデンのインクルーシブ教育1


 今日は、質問があったスウェーデンのインクルーシブ教育について書こうと思います。 ここ数年、スウェーデンのインクルーシブ教育に関して質問をうけることがあり、その度に答えに困っていました。理由は、日本の方は、スウェーデンではインクルーシブ教育が進んでいるということを前提に質問されるので、説明が難しいのです。私は、日本を離れてすでに15年以上経っており、現在の日本の状況がよくわかりません。このため、比較をすることが難しいのですが、おそらく、スウェーデンの現状は日本よりは進んでいるのだろうと思いますが、スウェーデンのインクルーシブ教育も大きな問題をたくさん抱えており、共有できる問題も多いのではないかと想像しています。

 インクルーシブ教育は、スウェーデン語では、「Inkludering(インクルデーリング)」 と呼ばれています。インクルーシブ教育の行われている学校を「Inkluderande skola(インクルデーランデ スクーラン)」と呼んでいます。では、どんな学校のことをインクルーシブ教育が行われている学校と呼ぶかというと、2013年に出された特別支援教育専門機関によれば、
  • 様々なレベルでの帰属感、共通意識がある
  • たった一つのシステムであること(「普通の」生徒と「そうでない」生徒に分けたシステムでないこと)
  • 共通、同等の民主主義があること
  • 生徒たちの参加があること
  • 「違い」が良いものとして捉えられていること
とあります。上記のことが普通のこととして行われている学校がインクルーシブな学校ということになります。じゃあ、実際にスウェーデン中がこういう学校なのかというと、難しいところがあります。単純なところで、前に聞かれたのが、特別支援学校が存在しないのではというもの。そんなことはありません。私が働いている学校は、特別支援学校の中でも、特に重度の生徒を集めた学校になります。私はいつも説明するときに、スウェーデンは、「分離統合教育」をしていると説明しています。この言葉は私が勝手に作って使用しているものなので、ご注意を。。。

スウェーデンでは、上記のような定義でインクルーシブ教育を行う大前提に、知能指数70を境にして、特別支援学校と普通学校に分けています。どんな障害を持っていても、知能指数が70を越えると普通学校に、70未満であると特別支援学校に行くことになります。正確に書けば、知能指数70未満の場合、知的な障害があるとなり、特別支援学校に行く権利が与えられることになり、実際に行くかどうかは保護者が決めるというのが一般的です。学校法では「子供の最善」という項目があり、周囲が判断をすれば、親の決定を変えることもできます。知能指数が例えば、71であれば、知的な障害はないため、肢体不自由や発達障害であっても、普通の学校に通うことになります。このスウェーデンのシステムを、私は、知能指数70で「分離」して、「統合」する教育というふうに説明しています。

例外は、聾学校になります。盲学校はなくなり、地域の学校に吸収されましたが、聾学校は、国の管轄で今も残っており、インクルーシブ教育とは、程遠く、分離されて教育が行われています。特別支援学校も、その昔、無くそうという動きがあったのですが、簡単にまとめて書くと、特別支援学校の現場で働く職員の反対が大きかったために実現しなかったという声をよく聞きます。これに関する報告書があるので、また、機会があれば、いつか、書こうと思います。

その昔って、そんなに昔ではないですが、2010年に学校法が新しくなる前までは、この分離された特別支援学校に知的障害のない、知能指数が70を超える自閉症児も通うことができました。それが、2010年に学校法がかわり、なんと、それまで特別支援学校に通っていた知的障害のない自閉症児は、突然普通学級に戻されることに。😓 これは大問題になりました。。。特別支援学校には、障害判定が降りていない子も「反対のインテグレーション」という名前で通っていた場合もあり、これも強制的に普通学級に戻されたり。。。あとは、特別支援学級のような「特別なクラス」は、廃止され、すべての生徒がいわゆる「母体級」に所属し、インクルーシブ教育をしていくことになりました。この2010年の頃は、こうした法律の変化により、学校はちょっとしたカオスでした。。。どのくらいの生徒が、移動したかなどの統計は見たことがないのですが、これらの改革?の結果、ものすごく登校拒否、不登校が増え、現在、スウェーデンで大きな問題となっています。

それでは、なぜ、このようなインクルーシブ教育が推進されたかといえば、やはり日本と同じだと思うのですが、国際的な流れが大きく関わっています。スウェーデンもサラマンカ宣言や国連の障害者権利条約などの国際的な条約に批准しています。こういった外枠が出来上がり、それによって、少しずつ社会が変化していくことは重要であると思います。学校が、障害の有無の関わらず、様々な子供達によって、その違いを可能性として受け止め、互いに成長していける場となることは、社会、個人にとって、とても重要であると思います。そのために少しずつ変わっていっているのが、今のスウェーデンのインクルーシブ教育ではないかと思います。

だいぶ長くなったので、「スウェーデンのインクルーシブ教育2」に続けます。


2017年2月25日土曜日

スポーツ休暇

 今日から、スポーツ休暇です。😀 前回の更新からだいぶ経ち、あっという間に2月も終わろうとしています。先ほど、日本週間に参加してくださる方には、詳細をお送りしましたので、届いていないという方がいらしたら、ご連絡ください。

 スポーツ休暇とは、スウェーデン全土で地域ごとに秋をずらして取ることになっている学校のお休みで、文字通り、冬のスポーツを楽しむための休暇になります。ストックホルムは毎年第9週がスポーツ休暇。春学期はお休み多いので、あっという間に終わってしまいます。スポーツ休暇までが一つ目の山で、次はイースター。そして夏休みって感じです。

 日本でも子供の貧困が問題になっていると聞きます。こちらでも同じ問題がありまして、スポーツ休暇といっても、どの子もスキーなどのウィンタースポーツをしに出かけるというわけではありません。クリスマスにお金を使ってしまうため、1年で最も貧しいと言われる1月が過ぎ、2月にあるこの休み。それなりに家庭に余裕がない限りは、自宅で過ごす、どこにも出かけないという家庭も多くあります。暖かい国に太陽求めて出かける家族もありますが。同僚たちによれば、(おしゃべりなおばさんたちがたくさんいるので、いつも色々教えてくれます。)その昔は、湖に氷が張ったり、水を撒いてスケートリンクを作ったりして、子供達はスケートをしたり、クロスカントリースキーをしたりしたらしいが、最近はあまりしないそうで、自分の子供にスケートやスキーを買い与えていないという人も多くいます。ストックホルムあたりだと雪の量がここ数年少なく、クロスカントリーは難しいし、スケートも氷が心配であまりさせられない、すぐに大きくなるのに、結構高い道具を揃えられないと。片親の家庭であったりすると、特に難しいのは想像にかたくありません。

 私の学校も雪が降ったら、ソリで遊ぼうと計画していましたが、今年は雪が少なく、やっと降ったと思ったら、スポーツ休暇なので、おそらくそりは今年はなしかな。。。

 
 わたしは、友人に会おうと計画を立て始めたのですが、愛犬、椎間板ヘルニアになり、絶対安静ということで、家でじっと犬としています。ブログの更新が何回かできればいいかな。皆さんも、良い週末を!



 
 

2017年2月4日土曜日

日本週間のボランティアについて

 私の働いている学校で毎年行なっている日本週間に参加してくださるボランティアの方を募集しています。今年も何名かの方が参加したいと連絡をくださり、嬉しい限りです。日本の姉妹校からも、作品が届き、今年の日本週間で行えそうなものもたくさんありました。今からとても楽しみです。

 今年も宿泊を希望される方が数名いらっしゃり、宿泊を希望されるボランティアの方の募集は締め切らせていただきます。学校はストックホルム郊外にあり、宿泊を希望されない方の参加は、まだ受け付けていますので、希望される方は、是非ご連絡ください。

詳しい詳細はこちらを


 質問などありましたら、遠慮せずにどうぞ!メールアドレスは、以下になります。
swedenpedagog@yahoo.co.jp