2016年11月5日土曜日

批判だらけの政府の教員給与政策:Lärarlönelyftet

 秋休み中です。雪が少し降って、なんだか冬らしくてとてもいいと思うのは、勤務先が家から近く、車に乗らなくていいわたしだけで、多くのスウェーデン人たちは、大慌てで冬タイヤに変えています。同僚が、「このあたりは、スウェーデンでも冬タイヤにする必要がなかったんだよ」というので、「その車は、馬という動力を使っていたのか」と返すと、大笑いでしたが、本当にストックホルムあたりで冬タイヤを強制するようになったのは結構最近のことらしいです。

 年度始めは毎年バタバタしますが、今年は校長が病気になり変わったり、他にも理由があって、ドタバタ感が満載でした。それでも、秋休みになると、山を超えた感じがします。書きたいことがいくつかあるのですが、とりあえず、批判だらけの政府の教員の給与政策について書こうと思います。


Lärarlönelyftet」と呼ばれている政府の教員の給与政策、目的は、教員免許を持っているなど、ある一定の能力のある教員、幼稚園教諭、学童教員のお給料を上げるというもので、今年の7月に始まりました。一番の目的は、教員という職業のお給料をあげることで職業をより魅力のあるものとし、多くの人が教員になろうと思ってくれる、教員を続けようと思ってくれることと、学校の教育成果を伸ばすことにあります。この考えは悪くはなかったのですが、30億のお金を約6万人の先生にわける方法が、どうも問題だったようです。わたしにもこの情報は7月に開始されるということで、その頃にメールで「こんな人がもらえます」みたいな条件を書いた紙が送られてきました。結構な条件が書いてあり、例えば、教員免許を有することや週に何%以上生徒に授業をしていることなとが上がっていました。

この給与対策、ものすごく批判が集中していて、フェイスブックや教員情報メールでは、旬の話題といった感じ。もらえた人はいいけれど、もらえなかった人が不平等だと仕事を変えたり、職場を変えたり、教員やめたり。。。スウェーデンらしいのが、うちの職場では話題にならないこと。仲の良い先生とチラッと話すことはあっても、もらえなかった人がいることがわかっているので、あえて話題にしない。。。


何が問題かを整理していくと、


  • コミューンのトップが政府に申請してもらえるお金なので、スウェーデン中のコミューンで条件が違う。これにより、申請しなかったコミューンの先生は全く恩恵を受けられず。
  • 教員免許を有しない先生が結構いるスウェーデンでは、恩恵を受けられなかった先生が結構いる。これに対応したいくつかのコミューンがあり、全ての先生のお給料をあげたところもある。もらえる先生の分は国のお金でまかない、それに当てはまらない先生の分は、コミューン独自の予算でまかなった。こうなるとどこのコミューンで働いていたかにより、大きな差が。。。
  • 条件が当てはまっていてももらえなかった先生がいる。コミューンが条件を設定できるので、解釈の問題ということもあり、コミューンごとにかなり違う。うちのコミューンは、特別支援教育の専門教員も対象になったし、校長なども対象になりましたが、コミューンによっては、特別教育専門支援員などの生徒に関わる時間が多少少ない先生などはもらえなかったり、条件が満たされていても、何らかの理由でもらえなかったりした先生がいたようです。
  • 早いところは7月に、遅くてもこの10月には、いくらお給料が上がるかがわかったので、7月にわかった人などは、夏の間に転職して、お給料をあげたとか。遅い人たちは、今やめる申請をして1月から違う学校で働くようです。スウェーデンで、最も簡単に早くお給料をあげる方法は転職することなので、みんな実践です。。。
  • 政府からのこの政策は1年のみなのですが、コミューンによっては、独自にこのあげた分を維持していくようで、ここにも不平等感が。。。ちなみにうちのコミューンは今年度のみ。なので、ちょっとしたボーナスが出た感じです。
  • 今から今年の給与交渉に影響が出るのではという懸念が出ています。今回お給料が上がったからといって、毎年の給与交渉に影響を与えてはいけないのですが、そこは人情、今回お給料が上がらなかった人たちのお給料が優先してあげられるのではという話が出ています。
  • 話では、月2500ー3500クローネ上がるという話だったのですが、実際には、300クローネから5000クローネとかなり幅があるようで、これもコミューンや校長などによってかなり違うらしい。。。


色々と問題があるのですが、かといって、教員全員のお給料をあげても問題で、やはり教員免許を持っている人は、それなりに努力をして免許を取得したわけで、何かしら反映されてもいいと思ってしまうのは、日本人だからでしょうか。免許制になってすでに5年が経過しており、取ろうと思えば取れたわけで、努力して働きながら取得した人などは、今回の給与政策の恩恵を受けてもいいと思います。ただ、コミューンによって、これだけ違ってくると、やはり教育は国レベルが管轄したほうがいいという話になっていくのではないかと思ってみたり。平等意識の強い国で、平等とは何かを考えさせられる教員の給与政策だと思いました。