2013年12月25日水曜日

フィンランドの次はポーランドだ!

クリスマス、いかがお過ごしでしょうか。我が家は、「ありえないー」と100回くらい叫びたいくらいの出来事があり、クリスマスイブは大変なことになっておりました。はあ。。。
 気を取り直して、前回に引き続きPISAの学習到達度調査に関する話題を。前回の記事はこちらからご覧いただけます。
 今回の結果で目を引き、話題となっているのが、実は、
ポーランド
なんです。今までは、PISAといえば、フィンランドかアジア諸国でしたが、今回躍進したのが、ポーランドなんです。では、まずは、結果を。
読解力
2000年のテスト開始時には、スウェーデンは、516ポイント、OECD加盟国の平均が、500ポイント、そして、ポーランドは、479ポイントでした。これが、スウェーデンはこの12年間下降し続け、なんと、2012年では、483ポイント。そして、ポーランドは、518ポイントでした。OECD加盟国の平均は496ポイントなので、ポーランドはその上をいっています。順位で見れば、日本が1番、フィンランドが3番、ポーランドが6番、スウェーデンは、27番。
数学
ポーランドは2000年は470ポイントしかなく、スウェーデンは510ポイントありました。OECD加盟国の平均は500ポイント。これが2012年の結果では、逆転し、ポーランドは518ポイント、スウェーデンは、478ポイント、OECD加盟国の平均は、494ポイントとなっています。ここでもまたポーランドがぐっとこの12年で力を付けてきたことがわかります。順位でみると、日本が2番でフィンランドが6番。これに次いで、ポーランドが8番に付けています。スウェーデンは、28番。
科学
ポーランドは2000年は483ポイントあり、スウェーデンは512ポイントありました。OECD加盟国の平均は。やはり真ん中の500ポイント。これが、2012年では、逆転し、ポーランドは、526ポイントあり、スウェーデンは485ポイントとなっています。OECD加盟国の平均はあまり変わらず、501ポイント。順位でみると、日本が1番、フィンランドが2番、ポーランドが5番となっています。そしてスウェーデンは、27番。
今回ポイントが下がったフィンランドに取って代わって、メデイアで取り上げられているのがポーランド。やはり、この12年でポイントをしっかりあげてきたことがわかります。日本とかアジアの国々のようにポイントが高いことで知られていないマイナーな国だっただけに、今回の結果は目を引きます。
ポーランドの関係者は、インタビューで「この結果にとても驚いている」とコメントしており、今後様々な分析などが出てくると興味深いなあと思います。ポーランドは、どうも90年代に大きな学校改革をしたようで、その内容の一部が以下のようなものだったようです。
  • 義務教育を8年から9年にした。
  • 最初の6年間を小学校とし、最終学年に全国統一テストを導入した。
  • さらに3年勉強した後も、テストがあり、その後の進路に大きな影響を与える。
とありました。他にも特別な支援手だての導入を早期にしたなどというのもどこかで聞いた気がします。これらの学校改革の批判的な部分としては、やはり、学校教育がテスト中心になり、その結果に一喜一憂するようになったと言うことがあげられていました。学校の善し悪しをテストの結果で計るようになると、どうしても聞かれるマイナス部分です。ただ、こういった改革がピサの学力到達テストで結果をあげるのには必要なのだとすれば、なんだか教育とは何かという部分にまで関わってくるように思います。
 ポーランドが良い結果を残すに至った他の要因が今後研究者によって発表されるようになり、おそらくスウェーデンはそれに大きな関心をしめしていくと思われるので、どんなものなのか大変興味があります。時間がなくて、まだちらっとしか読んでいない、スウェーデンと日本のピサの結果をまとめたものも比べると面白いだろうなあとか思ってみたり。
 スウェーデンの様々なところで聞かれる声をまとめると、どちらかというと、あまりピサの結果に左右されない方がいいといった声を聞きます。これはこれととらえ、スウェーデンにはスウェーデンの教育のあり方があり、その教育を自国で計って、良くしていくことができればなあと思います。ま、興味深いのですが。。。

2013年12月23日月曜日

スウェーデンのピサの学力テストの結果と今後の選挙の行方

冬休みになり、やっと少し落ち着いた毎日になりました。年明けに控えたテストに向けて勉強を開始しなければと思いつつ、クリスマスらしくない外の風景を眺めています。(今年のストックホルムは雪がまだ積もっておらず、ホワイトクリスマスにはならないようです。)
  
 今日は、いろいろ思うところのあるピサの学力テストについて書こうと思います。12月に入り、2012年のピサの学力テストの結果が発表され、話題になりました。12月の半ばの大学の登校日でもその話がでましたし、選挙を控えているスウェーデンでは、政治も絡み討論番組でもかなり取り上げられました。国営テレビの討論番組にはいろんな国の方々が参加されたものもあり、大変興味深く見させていただきました。日本人の方もでていらして、やっぱりそう思うんだなあと思いました。
 ピサの学力テストについて少し書くと、テスト自体はそんなに古いものではなく、新聞の記事にこの立ち上げに関わった人のコメントが出ていたので調べてみると90年代後半につくられたもので、第1回目は2000年ということでした。その後、3年ごとに行われており、その人も、作成当時には、「こんなにこの学力テストが騒がれ、政治的な判断を下すのに使われるようになるとは思わなかった」とありました。スウェーデンの新聞やメデイアで昨年このピサの学力テストの名前が出されたのは、実に459回。その注目度はかなり高いです。
 個人的には、このピサの学力到達度調査で出される結果に一喜一憂して、学校の制度を変えていくとか、教育を批判するというのはあまり好きではありません。特にスウェーデンと日本で教育に関わってきて、その国が求める能力、社会が求める能力には差があり、それにより作られている学校の教育は、こういった学力テストで計られる以上のものがあると思います。また、今年に入ってピサに関する研究が出され、子どもへのテストと同様に行われる校長へのアンケートに関しての不正が発表されています。そうなるとこのテストに関する信用性というのは、騒がれるほど高くないのではないかとも思います。

 簡単に結果をみると、
読解力
2006年と2009年は韓国がトップでしたが、2012年は538ポイントで日本でした。OECD加盟国の平均ポイントは496ポイントで、スウェーデンはというと483ポイントでした。前回のポイントから下がった率が最も大きな国ということで、この3年間で子どもたちの読解力がかなり低下したことが問題視されています。
数学
2003年と2006年のトップがフィンランドで、その後2009年と2012年が韓国となっています。数学に関しては、北欧諸国の中で最も低い結果となったスウェーデン。OECD加盟国の平均ポイントは494で、スウェーデンのポイントは、478ポイントでした。こちらもかなり低い結果です。
科学
2003年、2006年、2009年とフィンランドがトップでしたが、今回は、日本がトップ。ポイントは、547でした。OECD加盟国の平均ポイントは501で、スウェーデンは、485ポイント。

慰めのように書かれているのが、今まですばらしいと言われ続けたフィンランドの結果が今回は、下がったこと。お隣の国で常に比べられているフィンランドとスウェーデン。スウェーデンのさんざんな結果を慰めるかのようにフィンランドのポイントもどの分野でも下がったのです。それでも、スウェーデンよりはかなりよいのですが。。。スウェーデンはというと、2000年の初回では、OECD加盟国の中でもトップクラスの結果を残し、スウェーデンより良い国は3カ国しかなかったのに、2012年の結果では、スウェーデンより結果が悪いOECD加盟国は3カ国のみ。ピサに関する記事やニュースで良いものは聞きません。。。
この結果に頭を悩ませているだろうと言われるのが、現政府と教育関係の大臣であるJan Björklundでしょう。来年に迫った選挙を前に、押し進めてきた学校改革の結果がこのように思わしくないと選挙戦どのようにでるかが大変重要になります。学校改革の結果が出るには時間がかかるために、それを言い逃れに使ってきた大臣ですが、さすがに、7年8年と大臣をしてくると、一般の人にはこの言い訳はもう使えないのではないかと。
しかし、学校改革自体が難しいものなので、今のところ、私が思うにそれほどたいした案が他の政党からあがっていないというのが慰めかも。どの政党の案もアイデアもいまいち、ぱっとしないし、本当に実現するのかと思わせます。このあたり、今後どのようになっていくのか大変注目するところです。スウェーデンの現在の学校の問題には、どの政党も歴史的に負い目があるせいか、あまり強く出ないのかとも思っています。

この学力テストでは、生徒への学力テストに加えて、先に不正があったと書いた校長への聞き取り調査が行われます。この聞き取り調査のスウェーデンの結果で気になるのが、
  • 授業に遅れてくる生徒が多いこと
でした。どうも、授業に遅れてくる生徒が増えているようで、他の国と比べても多いようです。授業をさぼると親への連絡が厳しくいくのでさぼることはないかもしれないのですが、授業時間に遅れてこれば、やはりそれはかなりその子どもにも回りにも影響を与えているのではないでしょうか。このあたり、スウェーデンの学校局がだす分析書をもう一度詳しく読みたいと思います。